中国初恋
作者ことさくら剛氏の旅行記。
私は東南アジアやインドあたりでうろうろしているバックパッカーの人たちと同じく若い時分に(自分の場合高校生の時)沢木耕太郎氏の『深夜特急』に嵌ったクチ。バックパッカーの方々と違うところは『深夜特急』に感化されたのに沢木氏のようにバックパックを背負って海外に飛び出さなかったところ。しかし、その影響で今も他人の旅行記を読むのは好きです。
そして、WEB上で旅行記を探している途中にさくら剛氏の旅行記を偶然に見つけたのです。最初はいくつかの章だけをつまみ読みして「大して面白くない旅行記だな」と思っていましたが、最初から読み直してみると「これは面白い!」と思えるようになりました。
沢木耕太郎氏の『深夜特急』の旅は「インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスだけで行く」ものだったが、さくら剛氏の旅は「南アフリカのケープタウンから中国の北京まで基本的に陸路で行く」旅である。旅の過酷さでは『深夜特急』にひけをとっていない、というか、むしろ勝っている。
何しろ『深夜特急』ではアフリカ諸国などかすりもしていない上に最後の方(文庫版でいうと第5巻〜第6巻あたり)はギリシャ、イタリア、モナコ、スペインなどの西洋の国での旅行記なのに対して(『深夜特急』ではアフガニスタンを通るが、沢木氏が旅したころのアフガニスタンはまだ平和だった)、さくら剛氏の旅は交通機関があまり充実していないアフリカを縦断し、さらにはユーラシア大陸をほぼ横断する旅なのである。通過した国は南アフリカ−ジンバブエ−ザンビア−マラウイ−タンザニア−ケニア−エチオピア−スーダン−エジプト−ヨルダン−イスラエル−パレスチナ−シリア−トルコ−イラン−パキスタン−インド−バングラデシュ−シンガポール−マレーシア−タイ−カンボジア−ベトナム−中国、となんと24カ国である。
しかも、移動手段はダッカ(バングラデシュ)−シンガポール間を(ミャンマーは容易に入国できないので)飛行機で移動した以外は全て電車、バス、船等での移動。『深夜特急』の「ほぼ全ての旅程を乗り合いバスで」と比べると統一感はないかもしれないが、その分バラエティーに富んでいる。
文章は沢木氏のように格調高いもの、という風にはいかない。頻繁にはさまれるギャグや(号泣)などの表記、フォント変化などを受け入れられなければ面白いとは思えないだろう。私は、さくら剛氏の旅行記を楽しく読むことが出来た。
この旅行記は基本はおちゃらけた旅行記だが、時々真面目な深い文章が挿入されるので気が抜けない。特に実地で体験した「イスラム教徒の優しさ」や「パレスチナ問題に関する文章」は一読の価値があるのではないかと思う。